無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
どこに来たんだろう……、と思いあたりを見回す。
そこは、普段人が入らないような資料室だった。
気が付いたら、周囲に人など一人もいなかった。
「入るよ、玲奈」
「えっ、ここにっ⁉」
「うん」
驚いている私とは反対に、一樹くんは淡々とした様子で、資料室のドアを開けた。
二年間――正しくは五年間過ごしてきた校舎だけれど、初めてこの教室に入る。
だけど、ある程度掃除はされているのか、埃などはあまりなかった。
「……っ、玲奈」
「ひゃあっ⁉」
教室に入るなり、つながれていた手を一樹くんは強くひいて。
壁に押しやられた私の両耳のそばに、一樹くんの両手が置かれている。
……な、なんでまた……っ‼
ついこの間の休日もこうなったんだ。
どうして、もう一回……っ。
デ、デジャヴ……っ⁉
本日二回目のデジャヴなの……?