無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる


「……っ」




そんなことを言う一樹くんの表情を、指の隙間からチラチラと覗いてみる。



ふと、私たちの視線が絡み合った。




「ほら、その仕草も」


「……っ、へ」


「俺のこと見てるの、バレバレだよ?」


「……っ」




う、嘘っ、バレてたの……っ⁉



そのことに思わずぽかんとしてしまっているうちに、私の両手は、一樹くんにあっという間につかまれてしまった。



そして、視界がクリアになる。




「ははっ、本当だ、顔真っ赤」


「~~っ‼ 一樹くんのせい、だもん……っ」




そんなにからかわないでよ……っ。



一樹くんと目を合わせることはできなくて、視線を逸らす。




「玲奈」


「な、なにっ?」


「こっち見て」


「む、無理……っ」


「お願い、玲奈」




このやり取り、この間もした気がする……っ。



結局私は、恥ずかしくて一樹くんと目を合わせることができない。


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