無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
な、なにそれ……っ。
勘違い、しちゃうじゃん……。
なんて私がうろたえている隙に、視界が真っ暗になって。
甘い柑橘系のにおいが鼻腔をくすぐった。
「……っ、玲奈」
「……っ!」
耳元で聞こえる一樹くんの声で、抱きしめられていることを理解した。
間近で感じる一樹くんのぬくもりやにおいに、頭がクラクラする。
そして、大きく音を立てている心音が聞こえていて。
ねぇ、この心臓の音は、どっちのもの……?
どきっ、どきっ、と規則正しいけれど、とても速い音。
それは、私のものなのか、一樹くんのものなのか。
私には、理解することができない。
「……っ、いつき、くん」
「……なぁに、玲奈」
「私、さっきの……」
ファーストキス、だったの。
そう言って、きっと真っ赤になっているであろう顔を見られないように、私は一樹くんの胸に顔をうずめる。