無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
そして、一樹くんの服を両手でぎゅっと握った。
……離れてほしく、ない。
もうちょっとだけ、こうしていたい。
わがままでごめんね、一樹くん。
あと少しだけ……、君のぬくもりに触れていたい。
「初めて、だったの?」
「……う、ん」
「それなら……、よかった」
「……えっ」
なぜだかほっと息をはいて、安心したように言う一樹くん。
そんな一樹くんに、思わずぱっと顔をあげて、驚きの声をあげる。
すると、バチっと私たちの視線が重なった。
「玲奈の初めてになれたのは嬉しいよ」
「……っ」
「それじゃ、そろそろ戻ろうか?」
一樹くんのその言葉に、近くの時計を見る。
昼休みが終わるまで、あと五分しかなかった。
「……うん」
一樹くんの言葉にうなずくと、彼のぬくもりが離れて行った。
それを寂しく思ってしまう私は、やっぱり一樹くんが好きで仕方がないらしい。