Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 拭き掃除や掃除機、廊下のモップ掛けを二人体制で行い、就業時間の三時間を終えた。

 はぁ、疲れた……。

 肩や首筋を手でほぐしながら、想乃はため息を吐いた。コンビニと清掃業のバイトをかけ持ちする日々は、思った以上に疲れが溜まる。帰路を辿るころには日がとっぷりと暮れていた。そろそろ午後八時を回る。

 自宅の門扉を開けて、ようやくという思いで扉に鍵を差し込もうとした。

 うん?

 鍵を開ける間際でそれに気がついた。玄関扉の取手に小さな紙袋が掛かっている。『おかえり』と書かれた手書きのメモがセロハンテープでとめてあった。訝しく思いながらも、それを手に扉を開けた。

 ***

 『浅倉』と出された家の表札から幾らか離れたところで、怪しげな男の黒い影が揺れる。今しがた帰宅した想乃の様子を窺うと、男は満足そうに笑い、踵を返した。

 ***

 想乃は玄関の三和土で靴を並べて、手にした紙袋を開けた。何だろうと不審に思い首を傾げる。

 「ひゃっ!?」

 中身を見て脳で理解した途端、想乃は手から紙袋を取り落とした。落ちた拍子に中から二つのシュシュが飛び出した。

 「姉ちゃん、おかえり?」
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