Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 言いながら眉を下げ、慧弥が陽気に笑う。想乃の右手にまた彼の手が重なった。

「私、今まで彼氏っていう存在ができたことなくて。男の人と二人きりで出かけたり、父以外の車に乗ったり。ましてや助手席に座らせてもらうのなんて初めてなんです。こうやって、手を繋いだこともなくて」
「……ふぅん?」
「正直。男の人には免疫がないんです。なので慧弥さんの言動には……いつも驚かされてしまって」
「全部俺が初めてってこと?」

 想乃は無言で顎を引く。赤くなった頬に左手の甲を当てていくらか俯いている。

「そうなんだ。ますます気に入っちゃうなぁ」

 相変わらずのライトな口調に、つい上目遣いで睨んでしまう。

「その点、慧弥さんは慣れてますよね、女性の扱いって言うか……褒め言葉とか」

 諸々の社交辞令に、あと思わせぶりな態度も含めて。

「そうかな?」と言って慧弥がすっとぼける。

「はい。躊躇なくさらっと可愛いとか言っちゃうし、手を繋ぐのも全然平気そうだし。女性なら誰にでもそうなのかなって思ってしまいます」
「……ひどいなぁ」

 彼がくつくつと笑い、茶目っ気たっぷりに首を傾げた。

「俺は想乃だから言うんだし、優しくしたいと思うんだよ」
「……えぇ?」
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