Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 ***

 彼女を送り届けて自宅に帰り着く。シャワー浴で簡単に入浴を済ませてソファーに腰を据えたとき、手にしていたスマホが音を鳴らした。計ったようなタイミングだ。液晶に浮かんだ意味のない記号の羅列を見て回線を繋ぐ。

「お疲れ様です、ミライさん」

 電話の相手とひとまず挨拶を交わしてから本題に入る。『その後どうですか?』と少女の声に尋ねられる。慧弥は今週の彼女の様子を思い出し、簡単に報告する。特に今日は彼女に関する様々な物を買い揃え、ピアノもちゃんと手に入れたと伝えた。『そうですか』と相手が相槌を打った。

『大きく改変しなければいけない時期は終わりました。引き続き、彼女のことをお願いします』
「……ええ。そのつもりです」

 慧弥は満足そうに口元を緩めた。「ところで」と前々から気になっていたことを尋ねてみる。

「そちらは変わりましたか?」

 少しの沈黙が下りたのち、『いえ』と返事があった。「なるほど」。自分なりの解釈を得て慧弥は考えを巡らせた。

『それでは次回ですが……』

 そう言って少女の声に間が空いたとき、慧弥は兼ねてから懸念していたある考えを披露することにした。

「すみません、ミライさん。その前に僕からひとつお話しなければいけないことがあるのですが」

 慧弥は、今現在も状況が変わらず入院中である想乃の母親のことを話した。
< 137 / 480 >

この作品をシェア

pagetop