Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
首を傾げながら一向に座らない彼を見上げる。彼は穏やかな笑みを絶やさずに小さく頷いた。
「一緒に来ておいてなんだけど。俺は少し席を外すね。院長室に用事があるから」
「……用事?」
「うん。父が南沢の院長と懇意にしていてね。先日仕事の交渉もまとまったし、挨拶がてら少し話してくるよ」
仕事の……。そうなんだ?
こんな大きな病院相手にすごいな。想乃は「はい」と頷き彼を見送った。「あとで必ず戻るからお母さんのそばにいるんだよ?」と言われ、笑みを浮かべて返事をした。
慧弥が退室するのを見送り、母の無表情をまた見つめた。想乃はいくらかはにかみながら慧弥の話を母に聞かせた。彼と交わした契約の話にはいっさい触れず、彼を好きだという気持ちを正直に打ち明けた。
きっと今、こんな状態でなければ、どれほど喜んで話を聞いてくれただろう。そう考えると目の淵に涙が溜まった。親指でそれを拭い、「この前もね?」と話を続ける。先週末、生まれて初めてパーマをあてたことも話した。
「慧弥さん。本当によくしてくれるの。今日も私がお母さんを心配して泣いてしまったから……こうしてお見舞いにも連れてきてくれて。あっ、そうそう。郷ともライン友達なんだよ? 郷も慧弥さんのことを本当に慕ってて。前よりずっと明るくなった気がするの」
「一緒に来ておいてなんだけど。俺は少し席を外すね。院長室に用事があるから」
「……用事?」
「うん。父が南沢の院長と懇意にしていてね。先日仕事の交渉もまとまったし、挨拶がてら少し話してくるよ」
仕事の……。そうなんだ?
こんな大きな病院相手にすごいな。想乃は「はい」と頷き彼を見送った。「あとで必ず戻るからお母さんのそばにいるんだよ?」と言われ、笑みを浮かべて返事をした。
慧弥が退室するのを見送り、母の無表情をまた見つめた。想乃はいくらかはにかみながら慧弥の話を母に聞かせた。彼と交わした契約の話にはいっさい触れず、彼を好きだという気持ちを正直に打ち明けた。
きっと今、こんな状態でなければ、どれほど喜んで話を聞いてくれただろう。そう考えると目の淵に涙が溜まった。親指でそれを拭い、「この前もね?」と話を続ける。先週末、生まれて初めてパーマをあてたことも話した。
「慧弥さん。本当によくしてくれるの。今日も私がお母さんを心配して泣いてしまったから……こうしてお見舞いにも連れてきてくれて。あっ、そうそう。郷ともライン友達なんだよ? 郷も慧弥さんのことを本当に慕ってて。前よりずっと明るくなった気がするの」