Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「すみません。今は彼女と話してるので……」

 そう言いながら周りの状況に目を向けて、理解している。タクシー乗り場にひと家族が並んでいた。「ちょっと待っててね」。慧弥は想乃に断りを入れて運転手にお金を支払いに行った。

 状況から察するに病院(ここ)までの運賃を支払っているのだと思った。おそらくはまたすぐに乗るから待っていてくれ、と言って運転手を待たせていたのだろう。

 なるほど、今日は自家用車ではないということか。想乃はひとりで頷き、ラインの早さに納得した。

 慧弥が支払いを終えると待っていた家族が彼に会釈してタクシーに乗り込んだ。

「お待たせ」と言って再び想乃の前に戻ってくる。想乃は頼りなく眉を下げて彼を見上げた。「あの」と声を出す。

「今日、お誕生日なんですね」
「ん? うん。まぁ……そうだけど」

 どこか気まずそうに彼が目を泳がせた。

「私、なにも知らなくてごめんなさい。プレゼントもなにも……用意していなくて」
「あの人に言われたことを気にしてる?」
「……え」
「婚約者なら知っていて当然、みたいな」
「……はい」

 うーん、と項垂れて慧弥が襟足に手を当てた。ごめんね、とまた謝られる。

「俺も配慮が足りなかった」
「いえ、慧弥さんはなにも」
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