Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 店内を出る間際、姿見に映った自分が目に入り頬がまた熱くなった。見慣れない恰好なので、このまま外を歩くのは、やはり少しだけうら恥ずかしい。

 来た道を黎奈と戻りながら想乃は手にした鞄の持ち手をぎゅっと握りしめた。すれ違う男性が想乃を二度見して通り過ぎて行く。羞恥心からまた体温が上がった。

「あの、黎奈さん。やっぱりこういう服は私なんかには勿体ないというか……」

 駐車場に着き、黎奈が赤のジャガーにキーを向けた。「嫌いだわ」と呟く。え、と言う間もなく黎奈にジロリと目を見据えられた。

「“なんか”ってなに?」
「……え」
「自己防衛のつもりなのかもしれないけど。自分を卑下する言葉を使っているようじゃ、たとえ何年努力したとしても、慧弥の隣りには並べないわよ?」

 不意に顔面から水を浴びせられたような気持ちになった。確かに彼女の言う通りだと思った。

「そもそも自信のなさが体に現れるから姿勢も悪くなるし、似合うものも似合わなくなるの」

 ため息をついてから運転席を開けて黎奈が乗り込んだ。想乃は縮こまりつつも助手席のドアを開けた。せっかく黎奈が自分のために服を選んでくれたのに、と申し訳ない気持ちになった。

 カチ、と音を立ててシートベルトを締めると、白い歯を見せて笑う黎奈と目が合った。
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