Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 にっこりと微笑んだ彼女につられて想乃の口角も少しだけ上がる。

「私が自信をつけさせてあげる」

 そう言って連れて行かれた場所で、想乃はあんぐりと口を開けていた。丸く見開いた両目で前後左右を見渡し、ホテルのロビーのような待合室で軽く固まっていた。

 黎奈に連れられて訪れたのは、高級そうな雰囲気を放つエステティックサロンだ。

 質のいい調度品や丸い形のソファーがそこここに配置され、綺麗な女性たちが静かに座っている。

「エステなんて初めて来ます」

 隣りに座る黎奈にこそっと打ち明けると、彼女は穏やかに目を細めて笑った。

「良いわよ、ここ」

 ペンダントライトやフロアスタンド、間接照明を使用した空間は、エスニックな雰囲気を上品に演出している。殊に暖色系のランプが癒やし効果を発揮しているのだ。

「お待たせいたしました、並樹さま」
「行くわよ、想乃ちゃん」
「っは、はい」

 スタッフの女性と黎奈に声を掛けられて、慌てて後に続いた。

 初めて足を踏み入れる大人の世界だと思った。待合室から続く通路を歩き、足の裏に伝わる感触にも逐一感動してしまう。うわぁ、うわぁ、とつい挙動不審になる想乃を見て、黎奈がクスクスと肩を揺らした。

「想乃ちゃんって面白いわね」
「……え」
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