Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
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自宅へ帰り、リビングの扉を開けた瞬間、スマホが短い着信音を鳴らした。銀行からのメールだ。確認すると、一週間分の給与が振り込まれたとある。
振込元は慧弥だ。彼と交わした契約の報酬が支払われたのだと、今さらながら実感した。
ただ彼と会って、食事をして、毎日連絡を取り合っている以外にはなにもしていない。慧弥と会うときは一円たりとて使っていない。なのにこの給料だ。
想乃は茫然とスマホを見つめたまま、ラグを敷いた床に座り込んでいた。
今感じている日々の幸せは、このお金と引き換えに得ているのだ。好きな人の隣りに当然のように並び、美味しいものを食べて綺麗な洋服やアクセサリーで着飾って、大好きなピアノをまた弾いている。
以前のように時間に追われ、金銭面で神経をすり減らし、寝不足になることもない。さらには一年後の就職もサポートしてもらえる。
至れり尽くせりの扱いを受けてなお、給料を得ている。契約期間が終了したのち、あとくされなく終わる、そのために。
慧弥からお金を受け取って始めて後悔の二文字が顔を覗かせた。