Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃が欲しかったのはお金じゃない。ただ慧弥との接点が欲しくて引き受けた依頼だった。今後過ぎ去っていく一年が終わればこの関わりもなくなってしまうのだろうか。

 そう考えると圧倒的な虚しさに支配されてしまう。胸のうちに溜まった(おり)を吐き出すよう、重苦しいため息をついていた。

 黎奈から聞いた話には、それなりのインパクトがあった。小一時間ほど前のできごとだ。

 黎奈は食事を終えたあと一度ナフキンで口を拭い、水の入ったグラスで喉を潤した。

「あ、そうそう」と思い出すように続け、楽しそうに笑みを咲かせた。

「慧弥の高校生時代の元カノでひとりすごい子がいたんだけどね」
「すごい子、ですか?」

 想乃は首を傾げて話の続きを促した。

「別れてから二年越しに会いに来た子がいたの。直接うちを訪ねて、しかも子供連れで」
「……え」
「私がまだ二十三だったから、慧弥は二十歳(はたち)で大学生のころね」

 ということは、まさに今の自分と同年齢のときだ。七年前か、と想乃は無意識に計算する。

「元カノが言うには慧弥と付き合っていたころに妊娠して、別れたあとにひとりで産んだんだって。子供の年齢も一歳だったから時期的にも慧弥の子だって言い張って、認知してくれって頼みに来てね」
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