Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
【なら(エックス)さんにいくつか質問します。私の父の命日はいつですか? 私が大学を辞めた日付と、私が過去『学生音楽コンクール』で演奏した曲目が何であったか答えてください】

 数分の時間をおいてからスマホが鳴った。やはり思った通りだ。

 想乃は目を瞬き、丸い瞳を揺らした。父の命日、自主退学をした日付、コンクールの曲目がそれぞれ箇条書きで記されていた。どれも誤ることなくピタリと言い当てている。【全て合っています】と返信し、【もうひとつだけ質問させてください】と書いて送った。

 私であることの証明か……。さらに考えを巡らせる。困惑した表情で首を捻る。

 そもそも送り主である(エックス)が本当に未来人なのかどうなのか、未来人である場合、何年後に生きる人物なのか。あらゆる疑問が湧き、自分の趣味嗜好について質問したところで、変わっているおそれもあると思った。そうなると証明にはならない。

 なので過去、自分がもっとも印象的だと思う事柄について質問することにした。

【私がピアノを始めるきっかけとなった母との思い出を聞かせてください】

 家族四人で行ったテーマパークでのできごとを、見事言い当てることができたなら、送り主を未来の自分だと信じよう。そう決めた。
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