Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 しかしながら、返事は意外なもので【すみません】と即答された。

【これについて伝えるべきかどうか迷いもあったのですが、今現在の私は脳に病気を抱えていて、過去の記憶を失いつつあります。記憶喪失、とまではいきませんが。自分について覚えていることが曖昧なのです】

 突然の告白に当惑する。病気、と呟きどう返事をしたらいいものかと躊躇った。かなりショッキングな内容だった。

 仕方なく想乃は一番の疑問をぶつけることにした。覚えていないと言われたらそれまでだ。

【なら、これだけ教えてください。どうして父が亡くなり、母が植物状態になったあの事故を知らせてくれなかったのですか? 知っていたら、私は両親の旅行を止められたかもしれないのに。Xさんが私だと言うのなら、あなただって、止めたかったはずです】

 送信して数分、ドキドキしながらスマホ画面を見つめていた。ベッドに座り直し無意識に下唇を噛んでしまう。答えとなる吹き出しが浮かんだ。

【事故については必ず言及されると思っていました。私も両親が巻き込まれたあの事故はなんとしてでも食い止めたかった】
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