Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 ならば、相手に主導権を握られないよう、こちらから籠絡(ろうらく)すればいい。甘い言葉で手懐(てなず)け、思い通りに動かせばいい。そうすれば、不都合など起こりようがない。

 悪夢にうなされ、自らの叫び声で現実へと引き戻された。

「夢か」

 ひとりごち、両手で顔を覆う。安堵からため息を吐くと、思いのほか大きな音だったと気づいた。

 まだ室内は暗く、静寂が満ちていた。

 慧弥はヘッドボード上部の間接照明を点け、サイドテーブルに手を伸ばした。上体をなんとなく起こし、スマホを確認する。デジタル時計は4:23を示していた。

 時刻表示の下に、【わかりました】という文字が浮かんでいた。想乃からラインだった。

【明日は想乃の行きたいところに行こう。考えておいて】——昨夜、自分が送ったメッセージへの返信だ。

「……想乃」

 無意識に呟いていた。

 昨日電話で言った言葉を思い出した。

 ——「俺のこと……本気で好きになったりしてないよね?」

 わざわざ訊くべきではなかったか? ——いや、違う。間違ってなどいない。自分に言い聞かせるように心の中で問答する。

 彼女について調べ、会話を重ね、想乃があの手の女性ではないと確信している。それでも、まだ油断はできない。
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