Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「そういうおまえらはないのかよ、浮いた話のひとつやふたつ」
「無いな、去年の慧弥と同様。まだ考えられない」
「ははっ、潤は相変わらずカメラか?」
「ああ。来年また個展を開こうと思ってる」
「へぇ、いいな。観に行くよ」
「さんきゅ。ただな、最近マンネリと言うか。これだって被写体がなかなか見つからなくて、困ってる」

 慧弥と潤の会話をそばで聞きながら、想乃は美海の視線に気づき、ぎこちなく笑った。猫のような瞳でジッと見つめてくる。

 美海は無遠慮な視線を向けたまま、アーモンド型の目を細めて「まだ若いよね?」と不意に尋ねた。

 想乃はこくりと頷き、「二十歳です」と答える。

「うそ、二十歳なの? だったら花奏(かなで)のひとつ下じゃん?」

「ね、花奏」と言って横にいる若い茶髪の女性に同意を求めている。名指しされた花奏は垂れ目がちの瞳をぱちりと瞬き、あどけなく頷いた。

「結婚なんてまだ早いって思わないんだ?」

 想乃は黙って小首を傾げる。思います、と心の中で返事をする。

「自分のやりたいこととかないの? それかアレか、玉の輿。慧弥みたいな完璧な男と結婚できたら人生勝ち組も同然、みたいな?」
「……えっ、と」
「美海」

 露骨にものを言う美海を慧弥が窘めた。
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