Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 イブは母の治療がある曜日になっているけれど、この場合はどうなるのだろう。

 慧弥も日中は仕事だろうから、夜だけ空けておけばいいものか。想乃は首を傾げ、また確認しておこうと考える。

 あと一週間もすればクリスマス。でも、なにも考えず浮かれるほど、馬鹿じゃない。

 世の恋人たちにとってクリスマスは特別な日で、そんな日に彼とデートできるのは正直言ってすごく嬉しい。嬉しいけれど……切なくもある。

 クリスマスが終われば、年末、正月を経て、バレンタインデー、ホワイトデーと続く。恋人たちのイベントが目白押しだ。

 もし彼との関係が本物なら——どれほど楽しい毎日になるだろう。

「はぁ……」

 重苦しいため息が漏れた。婚約者のふりをするというのは、思った以上に大変だ。

 お互いに好きにならないというルールがある上に、片思いの相手が慧弥なのだ。

 これ以上好きになったら、もう戻れない気がする。彼に振られたら、きっと何年も引きずるだろう。

 不意にメールの着信音が鳴った。恋煩いから覚めて、スマホを確認する。未来の自分を名乗る、Xからのメールだ。

【還暦祝いパーティーはどうでしたか? 私が言っていた人が誰なのか、わかりましたか?】

 Xが言っていた人——つまり慧弥から自分を救ってくれる男性のことだ。
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