Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 パーティーで出会った人を思い返し、特に印象に残った人物を考える。想乃の頭に慧弥の父・慧と、いとこの潤が思い浮かんだ。

「あっ」と声を漏らし、こうしてはいられないと立ち上がる。

 想乃は時刻を確認し、急いで準備を始めた。

 *

 黎奈に迎えに来てもらい、想乃はエステティックサロンへ向かった。

 初めてのときと同じ個室で、同じ担当の岩崎に施術してもらう。施術後は、いつも通り『Tirta(ティルタ)Dining(ダイニング)』と表記された部屋へ移動した。

『Tirta』は“聖なる水”を意味し、デトックスと浄化をイメージさせると黎奈に教えてもらった。

 実のところ、このエステに来るのは三度目で、二週間に一度のペースで通っている。

「あの、黎奈さんに少し聞きたいことがあるんですけど」
「なに?」

 黎奈がグラスに水を注ぎ、手渡してくれる。

「ありがとうございます」と受け取り、想乃は慧弥の義母・穂花について尋ねた。

 先日のパーティーで、慧弥が穂花のことをよく思っていないように感じたため、何か不和の原因でもあったのかと思ったのだ。

 本人には直接聞きづらいので教えてほしいと頼むと、黎奈は少し困った様子で首を捻った。

「悪いけど……それに関しては力になれないわ」
「え……」
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