Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「私もよく知らないのよ。父が再婚した当初……確かに慧弥はよそよそしい態度を取っていたけれど、今ほど頑なではなかったし。何かしらのトラブルがあったとしたら、私が家を空けていた時期だと思う」

 想乃はぱちくりと瞬きし、言葉を失った。すると、黎奈が補足するように続けた。

「大学三年のころにパリへ一年間留学していたの。アパレルブランドを学ぶために、インターンシップを兼ねてね」
「そうだったんですね。すごいです」

 感心する想乃を見て、黎奈はほんの少しはにかんだ。

「そうでもないわ、好きにやらせてもらっただけだから」

 謙遜するように言うと、黎奈は軽く息をついて話題を変えた。

「ところで、想乃ちゃん、毎日暇じゃない?」

 想乃は「え」と反応する。

 黎奈には、慧弥と婚約するにあたり、これまで掛け持ちしていたアルバイトを辞めたと話していた。慧弥に頼まれて辞めたのだと。

 仕事をしていないので、今は週に二日だけ母の治療で病院を訪れている。それ以外、予定がない。

「もちろん、生活費なんかは慧弥が援助しているのよね?」

 言うまでもなく、慧弥から偽装婚約という形で給与を得ているとは言えない。想乃は曖昧に視線を落とし、「はい」と頷いた。

「想乃ちゃんさえよければ、うちで働く?」
「……え」
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