Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 誰かの人生の、大切な瞬間を華やかに彩る仕事。実際にそんな仕事ができたら、いいなと思う。自分の喜びもさぞや大きいだろう。

 コト、と小さな音がしてふと目を上げる。陶酔から覚めると、ローテーブルにマグカップが置かれていた。

「なにか気になる仕事はあった?」

 すぐそばに立つ慧弥を見上げる。彼は微笑みながら、静かにカップへ口をつけた。

 想乃はファイルを開いたまま、そのページを慧弥に見せた。「ブライダルピアニストか」と彼が呟く。

「不定期な仕事だね」

 そう言いながら、慧弥もソファに腰を下ろす。想乃との間に一人分のスペースを空けた。

「……はい」

 確かにそうだ。慧弥のメモにも「週末や祝日が多い」「繁忙期と閑散期の波がある」と記されている。

 一般的に、春や秋は結婚式が多いが、夏や冬は少なくなる傾向にある。

 では、できるだけ安定して収入を得るにはどうすればいいか。これについても慧弥なりのレクチャーが書かれていた。

「ブライダル業界とのネットワークを作る」ことや「エージェントやマネジメント会社に登録すること」とある。

 つまり、式場やホテルの担当者と直接つながり、定期的に仕事を受けたり、結婚式やイベント専門のエージェントに登録して仕事を紹介してもらう、ということだ。
< 282 / 480 >

この作品をシェア

pagetop