Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「それはSサイズで一人分です。二人で125円です」
「……うん。よくわからないけど、いいよ? 想乃が作ってくれるのなら」

 ふふっと微笑み、慧弥はグラスに口をつけた。

「ところで“なんちゃって”っていうのは、どういう意味?」
「通常なら鶏もも肉を使うんですけど、もも肉は高いので。うちは鶏皮を使ってるんです」
「……鶏皮?」
「はい。いい油が出て美味しいですよ?」
「へぇ……食べたことない。楽しみかも」

 慧弥はテーブルに空のグラスを置いた。

「それじゃあ明日は一緒に買い物に行って、お昼に“なんちゃって親子丼”を食べよう。ご飯はこっちで炊いておくから」

 そう言って立ち上がり「おいで」と手招きする。

 想乃はキッチンへ案内され、置いてある鍋やフライパン、調味料を見せてもらう。

「足りないものがあれば言ってね?」、そう言いながら、慧弥が冷蔵庫の扉も開けて中身を見せてくれた。

 調味料棚には、想乃が見たこともないスパイスがずらりと並んでいた。

「慧弥さん、料理するんですか?」
「……多少はね。肉や魚を焼いたり、蒸したり。簡単なものしか作らないし、時間があるときだけ」
「そうなんですか」

 それにしては調理器具が豊富に取り揃えてある。
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