Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 普段使わないのにこんなに? 誰かほかに料理をしている人がいるのでは……?

 眉を寄せながら無言で考えていると、慧弥がその疑問に答えてくれた。

「田代さんっていう家政婦さんが、隔週で来てくれるんだよ」
「家政婦さん……?」
「そっ。小さい頃から実家(うち)へ出入りしてる人だから俺の好みも把握してるし、腕も一流。料理も掃除も大体のことは任せてある」

 そうなんだ。それでこんなに。

 慧弥はそばの冷蔵庫を開け、ノンアルコール飲料の瓶を取り出した。「これでお酒が飲めたら最高なのに」とぼやく。

 ちらっと想乃を窺い、「ちなみに今日泊まっていったり……?」
「しませんよ!」
「だよねぇ」

 ははっと笑い、残念そうに肩をすくめた。

 慧弥の車で自宅まで送ってもらい、手短に入浴を済ませた。

 明々と電気のついたリビングに入ると、「お帰り姉ちゃん」と声をかけられる。

「慧弥さんとうまくいってるんだ?」

 ソファに寝転がったまま、弟の郷がからかうように言った。冬休みの間、郷はテレビを見ながら夜更かしするのが常になっている。

「まぁね」と答えたものの、少し考え込む。

「ねぇ、郷」
「んー?」

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