Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜


 やはり、Xから返事が届いていた。

 アラームが鳴り、スマホを手に取って止めた瞬間、ぼんやりとした視界の中でメール通知を捉えた。

 指先で目元をこすりながら、メールを開く。文章を読み取り、絶句する。一気に目が覚めた気分になる。

 Xのメールはいつも想乃を驚かせる。

 昨夜、この返事を見なくて正解だった。

【私が言いたいのはそういう、都合のいい部分ではありません。並樹が、今のあなたのように“未来人と連絡を取っている”可能性があるということです】
【並樹は何者かから、あなたの周囲で起こる不幸の情報を得て、それらを“改変している”のだと思います。なのであなたとの接触も早かった】
【過去を大幅に変えるのは罪深いことです。未来では起こっていない変化がいずれあなたを苦しめるかもしれません】

 想乃はスマホを閉じ、スウェットのポケットにしまった。階段を降りて洗面台に向かう。

 Xについて、改めて考える。

 Xは過去を変えるのは罪深いことだと言っていたけれど。じゃあ、“あの事故は”?

 洗面台の蛇口から流れるお湯をすくい、洗顔フォームで顔を洗う。

 まだ想乃がコンビニで働いていたとき。Xは小さな男児が交通事故に遭うという情報を想乃に伝え、救ってほしいと頼まなかったか?
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