Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 もし、未来であの事故が本当に起こった出来事だとしたら、想乃がそれを防いだのは過去を変えたことにならないか?

 そしてまたこうも思った。

 Xは郷がいじめで不登校になることや、母が早い段階で想乃のストーカーに殺されることを知っていた。知っていながら黙っていた。

 やっぱり、Xは未来の私なんかじゃない。

 Xは私を利用して何かを変えようとしている。信用してはいけない。

 フェイスタオルをぎゅっと握りしめ、鏡に映る自分をじっと見つめる。

 ……慧弥さんが、未来人と連絡を取っているかもしれないという話だけど。仮に、もしそうだとしても、彼は私にとっていい方向にしか動いていない。

 信じるなら、慧弥さんだ。Xじゃない。

 リビングに入り、ポットで湯を沸かす。マグカップにインスタントコーヒーを淹れてソファに腰を下ろした。

 Xのメールの内容が、まだ頭の中で渦巻いている。

 もしXが未来の自分じゃないなら、いったい誰なんだろう?

 Xの正体を探る手がかりがあるとすれば、想乃がメールで指示されて動いた、あの事故しかない。

 もし、あの交通事故を未然に防ぐことで得をする人間がXだとしたら?

 実際に事故を起こしたのは、男児を車で撥ねた運転手。Xはその人物だと考えるのが妥当かもしれない
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