Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃は戸惑うように瞳をさまよわせ、こくりと頷いた。どんな言葉を選んで、なんて答えればいいのかわからなかった。

 想乃の反応を見て、黎奈が大仰に息をつく。「呆れた」とぼやいている。

「想乃ちゃん、あんまりのんびり構えてると機を逃すわよ? せめて入籍の予定だけでもはっきりさせておかないと」
「……はい」
「と言うより、嘘かもねー?」

 困って俯いたとき、不意に試着室のカーテンが開いた。

 “嘘”という言葉にドキッとして、想乃は慌てて顔を上げる。声の主を認め、あ、と口を開けた。

 そこにはエネルギッシュな雰囲気の女性が立っていた。ふわりと揺れるボブヘアが以前と変わらずよく似合っていた。確か、十二月のパーティで会ったはずだ。

「あら、いいじゃない、美海」
「黎奈ちゃんの見立てだから当然」

 そう言って美海は黎奈にチャーミングな笑みを見せる。慧弥と黎奈のいとこ、並樹美海だ。

 黎奈が作った家系図によると、年齢は想乃より五歳年上。

 美海は着替えを済ませ、試着室から出てきた。

「ねぇ美海、さっきの“嘘”ってなに? どういう意味?」
「ああ〜……」

 美海はどこか意味ありげな視線を想乃に送り、含みのある笑みを浮かべた。ピンク色のルージュが艶やかに曲線を描く。
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