Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
しばらくして、隣接した個室でカーテンが引かれる音がし、誰かが入ってきた。
着替えを済ませて靴を履くと、「どちらも購入でいいわよね?」と黎奈に確認された。
「……あ、いえ、その……」
想乃はぎこちなく笑い、小さく首を振った。
「どちらも素敵なんですけど……自分のことにはあまりお金をかけられなくて」
先月、潤の依頼で謝礼をもらったし、つい先日には慧弥からひと月分の給与も振り込まれたのだが。自分のために高価なものを買うのは、やはり気が引けた。
弟の郷には新しい服や靴を買ったけれど、それ以外は全部生活費に回した。母の医療費もまだまだかかるし、自分のために贅沢する余裕などない。
「なに言ってるの」と黎奈が眉をひそめる。美人はどんな表情をしても美しいものだな、とふと思ってしまう。
「想乃ちゃんはもうすぐ家族になるんだから。私が買うに決まってるじゃない」
黎奈が店員の女性に指示をしたらしく、すでに二着のワンピースが紙袋に包まれていた。
「はい」と黎奈に紙袋を渡されて、しどろもどろにお礼を言う。黎奈の意思の強い瞳が想乃を映した。
「ところで、慧弥とはいつ籍を入れるの?」
「……え、と」
「まだ決まってないの? もしかして挙式の日取りも?」
着替えを済ませて靴を履くと、「どちらも購入でいいわよね?」と黎奈に確認された。
「……あ、いえ、その……」
想乃はぎこちなく笑い、小さく首を振った。
「どちらも素敵なんですけど……自分のことにはあまりお金をかけられなくて」
先月、潤の依頼で謝礼をもらったし、つい先日には慧弥からひと月分の給与も振り込まれたのだが。自分のために高価なものを買うのは、やはり気が引けた。
弟の郷には新しい服や靴を買ったけれど、それ以外は全部生活費に回した。母の医療費もまだまだかかるし、自分のために贅沢する余裕などない。
「なに言ってるの」と黎奈が眉をひそめる。美人はどんな表情をしても美しいものだな、とふと思ってしまう。
「想乃ちゃんはもうすぐ家族になるんだから。私が買うに決まってるじゃない」
黎奈が店員の女性に指示をしたらしく、すでに二着のワンピースが紙袋に包まれていた。
「はい」と黎奈に紙袋を渡されて、しどろもどろにお礼を言う。黎奈の意思の強い瞳が想乃を映した。
「ところで、慧弥とはいつ籍を入れるの?」
「……え、と」
「まだ決まってないの? もしかして挙式の日取りも?」