Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
5
優しい手が、そっと髪に触れた。
指先がふわりと頭を撫でるたび、心がくすぐったくなるような心地よさに包まれる。
……あぁ。気持ちいい。
まどろみの中で、想乃はゆるりと瞬きをした。
視線の先には、柔らかく微笑む慧弥がいる。慧弥の寝室、だろうか。広いベッドにふたりで寝そべりながら、慧弥がなにか語りかける。
「……なんですか?」
囁くように問いかけると、慧弥は想乃の好きな笑顔でまた静かに髪を梳いてくれる。
それだけの仕草なのに、心がとろけるように温かくなる。
こんなにも優しい手をしていたんだ。
まるで大切なものを扱うみたい。ゆっくりと撫でられるたび、じんわりと幸福が染み渡っていく。
ずっとこのままでいたい。
そう願った瞬間──。
「……想乃」
不意に名前を呼ばれ、胸が甘く締めつけられた。けれども、すぐにその声が遠のいていく。
待って、まだ目覚めたくない。もう少しだけ、慧弥さんのそばにいたいのに……。
意識がふわりと浮かび、夢は静かに霧散していった。
突如として意識が浮上した。
「……んっ」
息が詰まる。喉の奥が強く締めつけられるような感覚。想乃は弾かれたように目を開いた。
視界の隅で、ぼんやりと光が揺れた。天井の間接照明。仄暗い部屋。壁には……鏡?