Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 慧弥と至近距離で見つめ合い、想乃は目をとろんとさせた。彼の匂いと感触が心地よくて、ついうっとりとしてしまう。

 頭の中に媚薬を流し込まれたみたい。

 想乃の反応を見て、慧弥は気を良くした。

「今日は色々あったと思うけど。大丈夫? ちゃんと眠れそう?」

「はい」と言って頷き、想乃は小さく微笑んだ。

「できるだけ……怖いことは考えないようにして、眠ります」
「うん。もし、あとで思い出したりして、眠れなくなったら。いつでも電話してきて? 会いたくなったら飛んで来るから」
「……っ、はい」

 ぐっと胸が詰まる。その言葉だけで、どこまでも幸せになれそうな気がした。

 シートベルトを外し、車を降りようとすると「あ、そうだ」と慧弥に引き止められた。

「バレンタインなんだけど。俺の一世一代の告白プロジェクトが台無しになったから……温泉でも行く?」
「お、温泉?」
「二人でゆっくり、混浴なんてどう? もちろん泊まりで」
「……む、無理です」

 想像するだけで頭が沸騰しそうだ。想乃はカッと赤面し、ゆでだこ状態で首を振った。

「やっぱりだめか……ちょっと期待したんだけどなぁ」

 慧弥は眉を下げて、くすくすと笑っていた。

「おやすみなさい」と手を振り、慧弥の車を見送った。
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