Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 犯人の男は事前に自分と想乃のことを調べ上げていた。しかも、想乃との関係が偽装であることも見抜いていた。「確か、初めてだったよね?」——この発言がそれを物語っている。

 もちろん、犯人との面識は一切ないし、映像から想乃も同様だというのは窺えた。

 犯人の背後に、手引きをした人物がいる。慧弥の周囲にいる誰かだ。警察も直接口にはしなかったが、そう睨んでいるようだった。

 俺を恨んでいる人間か……考えるまでもない。心当たりが多すぎる。その中でも“あいつ”の線が濃厚だけど……どうなんだろうか?

 思わず苦笑がもれた。額に手を当てて、慧弥は軽く途方に暮れた。

 警察の事情聴取では、慧弥も事件の関与を疑われた。当然と言えば当然だ。あらかじめ、想乃の危険を知っていて、GPSを持たせていたからだ。

 GPSについては、「以前にストーカー被害に遭った想乃を心配し、持たせていた」と話した。事前に想乃にも伝え、“合意の上で”持たせていたと。

 実際のところ、想乃にはGPSのことを伏せていたし、たびたび位置情報を確認していたので、それがバレれば慧弥は逮捕されるだろう。逮捕されれば想乃を守れない。

 今回想乃が『婦女暴行事件の被害者』になるのは、ミライから知らされていた情報だった。

 “未遂ではなく”、“未来の世界では実際に起こったこと”らしい。……が、ミライから見て過去の世界、つまり現在(いま)では、慧弥の干渉が早すぎたため、想乃の運命が大きく変化しているとのことだった。

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