Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
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静寂の中、かすかな物音が聞こえた。
想乃はぼんやりと目を開けた。リビングの薄暗い照明の中、布団にくるまりながら耳を澄ます。
何か、重い音がしたような……。気のせい?
——ガタン。
今度は確かに聞こえた。玄関の方だ。
枕元のスマホを手に取り、時刻を確認する。日付は変わり、液晶には1:43の数字が浮かんでいた。
慧弥が出発した翌日、田代と話してから、もう一週間が過ぎていた。彼とはほとんど連絡を取っていない。仕事が立て込んでいるのだろう、そう自分に言い聞かせていた。
けれど——。
慧弥の帰国は、まだ先のはずだった。
もしかして……帰ってきた……?
微かな期待を胸に抱く。隣で眠る郷を起こさないよう、慎重に布団を抜け出した。足音を立てないよう、玄関へ向かった。
そこで目にした光景に、想乃は息を呑んだ。
「慧弥さん……!?」
玄関の上り口——フロアタイルの上に慧弥が倒れていた。靴も脱がず、傍らには横倒しになったスーツケース。黒のコートを着たまま、静かに肩が上下している。
「慧弥さん、大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄り、彼の肩に手を置いた。熱い吐息が微かに肌をかすめる。額に触れると、じんわりと熱が伝わってきた。
「……っ、想……乃」
慧弥の眉がわずかに寄る。目を開けようとするが、焦点が合わず、まばたきを繰り返している。
「慧弥さん、わかりますか?」
声をかけると、一瞬だけ視線が合った。しかし、すぐにまた瞼が下がり、意識が遠のいていくようだった。