Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
第八章 絡み合う縁、明かされる真実と希望の兆し


 慧弥の部屋で夕食を済ませ、それぞれ順に入浴を終えた。

 想乃はソファに座り、ドライヤーで髪を乾かしながら、ふと遠目に慧弥を見やる。風呂上がりの彼が、やけに艶っぽい。

 多分、薄着だからだ。

 お湯に浸かってのぼせたせいか、慧弥は肩口で切れた紺色のノースリーブを着ていた。水を飲む喉が上下するたび、引き締まった腕や鎖骨のラインが際立つ。

 かっこいい……。

 もう何度そう思ったかわからない。そのたびに胸が甘く締めつけられ、物憂い吐息がもれた。

「想乃」

 不意に名前を呼ばれ、はっとする。慧弥が冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを差し出していた。

「飲んでないでしょ?」。彼のまなざしがそう言っている。

 想乃はわずかに赤らんだ頬を隠すように「ありがとうございます」と受け取った。キャップを開け、口をつけたとき。

 隣にふっと気配が落ちる。

 ドキン。

 心臓が大きく跳ねた。

 慧弥が、すぐ隣に座っている。

 好きな人と二人きりで過ごす初めての夜。この先に何が起こるのかなんて、考えなくてもわかる。それくらいの知識はある。

 想乃は緊張を誤魔化すように、手の中のペットボトルを見つめた。

「お湯になっちゃうんじゃない?」
「……え?」

 意味がわからず顔を上げる。

「想乃の熱視線で、水が沸騰しそう」

 慧弥はくすくすと笑い、想乃の手からペットボトルを取り上げる。
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