Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「そんなに緊張しないで?」

 優しく言いながら、軽く唇が触れた。甘やかな感触に、頭が真っ白になる。

「……と言っても、無理だと思うけど」

 カチコチに固まる想乃を見て、慧弥は困ったように微笑んだ。

 慧弥は想乃の髪に触れ、ゆっくりと梳くように撫でた。滑らかな指がこめかみから差し入れられ、親指の腹で頬を優しくなぞる。

 その心地よい手つきに、想乃は自然と目を細めた。指先が髪を梳くたび、甘く蕩けるような感覚が脳に広がっていく。

 もっと触れてほしい。そんな思いに身を委ねるように、想乃はそっと長いまつ毛を伏せた。

 不意に、慧弥の唇が額に落ちる。

 髪に触れていた手が耳元をなぞり、くすぐったさに小さく身じろぐ。けれど、逃げるよりも、この温もりを感じていたかった。

 彼の唇は額から頬へ、そして——唇に触れた。

 甘く、じれったい口づけ。

 慧弥の匂いに包まれるたび、緊張がほどけていく。想乃はそっと手を持ち上げ、彼の背中に指先で触れた。

 そのまま体がゆっくりと傾く。ソファを背に、長いキスを繰り返した。途中、慧弥が角度を変える。

 喰むような甘やかな感触が、胸の奥にポッと火を灯す。
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