Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
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想乃からスマホを受け取った。慧弥は指先で画面をスクロールし、最上部まで遡った。すぐ隣では、想乃が不安そうに眉を寄せている。
未来人を名乗る相手からのメールを、ひとつひとつ読み進める。
ミライが想乃にも干渉を?
一瞬、そう思ったけれど、違った。メールの内容からして、この未来人は全くの別人だ。ミライではない。
想乃が話した通り、最初のメールは自然災害の予知、株価の変動や万馬券の的中予測が並ぶ。まるで未来を見通しているかのような内容だった。
それが、ある時期を境にガラリと変わる。
【男児が遭う交通事故を防いでほしい】
【並樹慧弥に警戒しろ】
そんな指示めいた言葉が並び始める。
さらに、その頃から想乃は返信を始めていた。
文面を追うと、想乃は明らかにこの未来人を警戒しつつ、慧弥を庇うような言葉を送っている。
そして——
慧弥の目が、ある一文の上で止まった。
ふっと口元が緩む。
【今の私は脳に病気を抱えており、過去の記憶を失いつつあります。記憶喪失、とまではいきませんが、自分のことを曖昧にしか覚えていないのです】
なんだこれは……。
慧弥は思わず口元に手を当て、ふっと笑った。
「脳に病気を抱えている」?
ずいぶん曖昧な言い方だ。脳の病気と一口に言っても、原因や症状はさまざまなのに、それをひとまとめにしている時点で、こいつは医療の知識がまるでない。