Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 何より、“手遅れ”とは一体どういうことだ?

 未来から過去へデータを送る以上、送るタイミングはいくらでも調整できるはず。

「失敗したから手遅れ」というのは、未来のXが「過去を修正する」概念をまるで理解していない証拠だ。

 ……つまり、Xは時間通信について何も分かっていない。

 こんな浅はかな理屈で、よくもまあ「想乃自身」などと(かた)ろうとするものだ。

 慧弥は無言のまま指を動かし、次々と想乃とのやりとりを読み進めていく。

 その中に、興味深い内容があった。

【並樹慧弥は次期社長のポストを確固たるものにします。並樹の出世のために、あなたは多くを献上することになります】

 へぇ……そうなんだ。

 三十年後の世界では、俺が社長になっているわけか。

 それ自体は当然のことだが——【献上】という言葉の選び方が妙に時代がかっていて、また鼻で笑いそうになる。

 まるで、想乃が自分の成功のために何かを捧げるかのような言い草だ。

 不穏な空気を醸し出したいのだろうが、そんなものはちゃんちゃらおかしい。

 さらにスクロールすると、

【並樹慧弥に裏切られて捨てられる】
【金銭的な価値観の違いで衝突する】

 といった内容が続いていた。

 実に不快で、腹立たしい。

 こんなものを読まされて、想乃がどれほど不安になったことか——そう考えると、ますます憤りを感じた。

 Xとのメールは続く。

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