Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
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ソファでぴたりと並んで話す内容ではないな、と思った。
恋人同士が交わす会話なら、このあと彼が「なんてね」と笑うはずなのに——。
慧弥は微笑んでいた。けれど、その瞳だけはひどく真剣だった。
「未来人と、連絡を……? 本当に?」
彼の言葉をなぞるように尋ねると、慧弥は静かに頷き、これまでに取ってきた行動を話し始めた。
「そもそも、婚約者のふりをするという依頼自体がフェイクなんだよね」
「……へっ?」
想乃は、鳩が豆鉄砲を食ったようにぽかんと口を開け、瞬きを繰り返す。
「口実はなんでも良かった。ただ、俺が想乃に近づいて、きみを大切にすること……それがミライさんに出された絶対条件だったから」
「……ミライさん?」
「そう」
慧弥は軽く頷くと、スウェットのポケットから黒いスマホを取り出した。
「俺のスマホに、ある日突然かかってきた電話。その未来人は少女の声でこう言った」
そう言いながら、彼は録音アプリをタップする。
ザザッ——
雑音のあとに、可愛らしい少女の声が流れた。
『——私は三十年後に生きる未来人です。あなたが兼ねてから欲しくてたまらないもの……それを手に入れることを条件に、ある女性を幸せにしていただきたいのです』