Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 未来に生きる彼が、想乃の不幸をすべてなかったことにしたい……そう思ったということは。

 未来での、私たちの関係は……?

 慧弥とともに生きる幸せが、成り立たない運命を思い、言いようのない不安が胸に広がった。

「……そろそろいいよね?」

 囁くような声とともに、ふっと唇に温もりが落ちた。二度、三度。優しく、確かめるようにキスをされる。

 そして、じっと顔を覗き込まれた。

「俺たちの幸せは、俺たちで築けばいい」

 慧弥の声が、静かに降る。

「誰に何と言われても、俺は想乃を手放さないし、必ず守りきる」

 滲む視界の向こうで、慧弥が微笑んでいた。


 *

 午後、慧弥とともにカフェへ向かった。
久しぶりのデートに、心が弾む。

 遅めの昼食を取りながら、想乃は慧弥の仕事について尋ねた。

 彼が海外出張でどんな業務に携わり、どのようなトラブルを解決してきたのか。
それが気になったのだ。

 彼の話を聞くうちに、改めてその手腕に驚かされる。

 さすが常務という立場に就くだけある——そう思い、「すごいですね」と感嘆すると、慧弥は少しだけ照れくさそうに微笑んだ。

 アイスカフェラテにガムシロップを落とす慧弥の左手を眺めながら、想乃はふと尋ねた。
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