Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「俺の予想では、ある程度の年齢に達した大人の男性だと思うよ?」

 慧弥の言葉に、想乃の胸がざわついた。大人の男性——ということは、知り合いの可能性もあるのではないか。

「そのミライさんは……どうして私の不幸を避けようとするのでしょうか?」

 決して、不幸になりたいわけじゃない。
母には生きていてほしいし、郷には苦しんでほしくない。知らない人に乱暴をされるのも、ただただ怖い。

「明確な動機は俺にもまだわからない。ただひとつ言えるのは……想乃が幸せになる未来を作りたいからだと思う」
「……私が……?」
「そう」

 慧弥は静かに頷き、そっと想乃の髪に触れた。手のひらで頬を包み、指先で優しく撫でてくれる。

「おそらくは……“未来の俺”が絡んでる」

 ドクン——と心臓が強く打った。
 想乃は目を見開き、唇をわずかに震わせる。

「ミライさんは……未来の慧弥さん、ってことですか?」
「……いや」

 慧弥は小さく首を振り、薄く笑った。

「100パーセント否定はできないけど、多分違うと思う。でも、俺自身しか知らない過去を知ってるんだから……少なくとも俺は関係してる」
「……そう、ですか」

 想乃は目を伏せ、沈黙する。
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