Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
『いいでしょう。答えられる範囲でなら、そちらの疑問にお答えしましょう』

 ミライは少し間を置き、応じた。慧弥の意図を理解したのか、それとも単に彼の言葉に従ったのかは分からない。

 慧弥はローテーブルに置いた液晶タブレットにペンを走らせる。画面には【まずはXについて】と表示されていた。慧弥なりに、話の流れを整理しようとしているのだろう。

「ミライさんが把握しているかどうかはわかりませんが。実は、そちらの世界から想乃個人へのアクセスがありました」
『……アクセス。直接彼女にメールか何かを送りつけていた人物がいたと?』
「そうです。その人物はXと名乗り、想乃にフィッシング攻撃を仕掛けました。SNS上の偽のログイン画面にパスワードを打ち込ませ、それがそちらの不正アクセスに繋がっていると僕は考えています」

 ミライが沈黙する。

 Xの存在をまったく知らなかったのか、それとも慧弥の推理を受けて何かを考えているのか……。想乃には判断できなかった。

 ——Xとのやり取りを慧弥に見せた翌日、彼から問いかけられた。

「最近、ネット上で使っているパスワードをどこかで入力した記憶はない?」

 続けて、「ログアウトの覚えもないのに、緊急ログインを求めるURLを送りつけられたことは?」とも。

 それらの問いに、想乃は思い出した。

 慧弥への片想いを綴っていた日記サイト、『おしゃれダイアリー』。

 そこから、一通のメールが届いていたことを——。
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