Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「えっと。火曜日だから、家でピアノの練習をするぐらいですけど……」
『……わかった』

 慧弥は冷静にそう呟くと、また折り返すと言って電話を切った。

 想乃はスマホのホーム画面を見つめ、内に秘めた気だるさをハァ、と吐き出す。

 やっぱり……ちゃんと確証を得てから、言うべきだったかな?

 せめて、妊娠検査薬で陽性かどうかを確かめてからにすればよかった。

 慧弥はどう思っただろう。驚いた声のトーンからは、喜びも不安も感じ取れなかった。

 慧弥さん、困ってたらどうしよう……?

 約半年後に結婚式の日取りを決めたばかりなのに、妊娠なんて——。

 今朝感じた喜びが、一瞬にして萎んでいく。

 慧弥さん、早く電話してきて……っ。

 想乃はソファに座ったまま、ぎゅっとスマホを握りしめた。

 電話を切ってから、小一時間が経った。

 不意にスマホが振動し、慧弥からの着信を告げる。

「も、もしもし……?」

 声がわずかに強張った。

 彼が何を言うのか、散々頭の中でシミュレーションした。だから、どんな言葉が返ってきても、ちょっとやそっとでは傷つかない——そう覚悟していたのに。

『想乃』

 慧弥の声は、いつもと変わらず温かかった。

『急遽、有給を取ったから、今から二人で病院に行こう』
「……へ?」
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