Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃の脳内シミュレーションにはなかった言葉だ。思わず間抜けな返事をしてしまう。

『今から家まで迎えに行くね。準備してて?』
「……あ、はい」

 言いながら、ソファから立ち上がる。

『あっ、くれぐれも転ばないように気をつけてね? もし体調が優れなかったら俺も手伝うから、そのままでいてもいいし……とにかく待っててもらえたら』
「……え?」

 慧弥の声は、どこか焦っていた。

『ごめん、正直、今……余裕なくて』

 想乃は再びソファに座り、首を傾げる。

『今めちゃくちゃ嬉しい……っ。早く想乃の顔を見て、抱きしめたい』

 その声を聞いた瞬間——胸の奥がぎゅっと締め付けられた。

 心臓のあたりからじんわりと熱が広がり、頬もほんのりと染まっていく。

「私もっ、早く会いたいです……っ」

 声が涙交じりになった。


 *

 それから十数分後、慧弥が迎えに来てくれた。想乃が慌てて転ばないように、慧弥は家に上がり込んで、必要な荷物を確認しながら家を出る準備を整えた。

 病院へ向かう道中、慧弥はいつも以上に運転に気を使い、慎重に車を進めた。

 病院に着くと、車から降りる前に想乃の手をしっかりと握り、終始放さなかった。
< 451 / 480 >

この作品をシェア

pagetop