Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 窓口での受付では、想乃が座っている間に慧弥が想乃のマイナンバーカードを出し、手続きを進め、事務員に必要なことを伝えていた。

 問診票を書く際も、慧弥は無言で寄り添い、想乃が記入し終わるのを待ちながら、彼女の生理周期などを把握していた。

 急な予約で訪れたため、産婦人科の待合室では一時間半ほど待たされることになった。その間、慧弥は何度も「喉乾いてない?」や「気分は大丈夫?」と気にかけてくれた。

 隣で、ぎゅっと手を握ってくれる慧弥を見て、想乃は嬉しそうに微笑み、彼に向かって小さく言った。

「大丈夫です」

 その言葉を聞き、慧弥は安心した様子で軽く頷いた。また手をぎゅっと握り返してくれた。

 しばらくして、「浅倉想乃さん」と名前を呼ばれる。順番が回ってきたので、案内された診察室へ入った。無論、慧弥も付き添った。


 *

「おめでとうございます、ちょうど今、八週に入ったところですね」

 女性医師の声を聞き、想乃の中で歓喜が広がった。妊娠三ヶ月だと知らされた。

 そばに立つ慧弥の顔にも自然と笑みが浮かぶ。

「赤ちゃんの心拍も確認できましたし、順調に成長しています。まだ小さいですが、しっかりとその形が見えていますよ」

 医師はモニターを見ながら微笑んだ。

「初めての妊娠ですか?」
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