Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 姉はそれでも産むと決めた。自らの体に宿った命を無碍に摘み取ることはできなかった。

 郷は姉の死後、その決断を記した日記を初めて読んだ。その内容はあまりに重く、胸が締め付けられるほど痛かった。

 郷は、日記に書かれた事実を慧弥に伝えた。そして、想乃が生んだ子供——駈の存在も。

 慧弥は、涙で頬を濡らしながら、ただ静かに話を聞いていた。

 やがて彼は、自ら駈との親子鑑定を行い、血のつながりを確認すると、すぐに動いた。

 養子縁組をし、駈と正式な親子になった。

 それだけではなかった。郷にも手を差し伸べ、一緒に暮らさないかと誘った。

 そして、ナミキホールディングスで働く場を用意してくれた。

 郷は戸惑ったが、慧弥の真剣な目を見て、申し出を受け入れた。

 こうして郷は、駈と共に新たな人生を歩み始めた。

 
 *

 郷と駈が歩を進めると、低く一定のリズムを刻む電子音が鼓膜を打った。

 一室の壁面には、患者の生命状態をリアルタイムで監視・表示するインターフェースが淡く映し出されている。
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