Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 ピッ……ピッ……ピッ……

 室内の中央に、生命維持ポッドが静かに鎮座している。

 根本的な治療は不可能だが、延命を目的として開発された医療装置で、ただ命を繋ぎとめるためのもの。

 カプセルは透明な耐衝撃素材で覆われ、内部を外から見て取ることができる。

 その中には、無数の細いチューブが絡み合い、患者の生体情報——心拍、脳波、血液などのデータをリアルタイムで測定し、AIが瞬時に解析を行っている。

 カプセル内部に漂うのは、微細な減菌保護層——ミスト状の浮遊流体。その霧のような液体が、慧弥の身体を優しく包み込んでいる。

 喉元からは気管挿管チューブが伸び、人工呼吸器がその代わりに呼吸をしている。

 胸がわずかに上下するのは、彼の意志ではなく、機械が命を繋げている証拠だ。人間としての痕跡は、そこにはもうほとんど残っていない。

 郷と駈が、ポッドの前に立つ。

 郷はポッドの外部端末を確認した。

 脳波スキャンのフィードが安定している。液晶パネルには、先ほどまで交わされていた通信履歴が残されていた。

 集音マイクがポッドの外部に設置されており、慧弥への報告を可能としていた。

 内部には骨伝導スピーカーがあり、わずかでも聴覚機能を維持している患者の脳に、音を伝えられる仕組みになっている。
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