Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 左手の痣が消えた……。

 なぜだろう。確かに不可解な現象のはずなのに、どこかこうなるべくして、なったような気がする。

 まるで、運命が最初からそう決めていたかのように。

 痣の消失によって、未来の道筋が明るく照らされたような感覚があった。

 慧弥は手の甲を見つめ、ふっと表情を綻ばせる。

 ——その瞬間、唐突にアイデアが閃いた。

 未来で誰かの役に立つかもしれない医療装置『生命維持ポッド』の構造が、頭の中に鮮明に浮かび上がる。

 延命を目的としたこの装置に、根本治療の機能を加えられないだろうか?

 ただの閃きに過ぎない。だが、それが実現すれば——多くの人を救い、幸せにすることができるかもしれない。

 いいかもしれない。

 慧弥は口元に小さな笑みを浮かべ、想乃と再び手を繋ぐ。指を絡ませた。存在を確かめるように、ぎゅっと。

 想乃がふっと目を細め、愛おしそうに微笑んだ。



 ——愛おしい想乃。


 可憐で、可愛い想乃。
 

 ずっとずっと——


 俺だけの想乃だ。



 慧弥は微笑み、想乃とともにマタニティコーナーへと歩みを進めた。



【Deception 〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜】

〈了〉
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