男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
風向きが変わり始めたようです
ということで、私たちは、新道先生のお父さんが開催するパーティーにお邪魔することになった。
パーティー当日、私はルココちゃんが用意してくれたパンツスーツを着て、丸留さんが運転する車に乗ってルココちゃんと一緒に会場に向かった。頼人さんは、仕事を片付けてくるそうで、現地での集合となった。
私たちは、ひと足先に会場に着き、外で頼人さんを待つことにした。正装した男女が、次々と会場の中に入っていく中、会場から一人の男性が、出てきた。
「ああ、居たいた。世奈ちゃん」
どうも、先生にとって私が一番話しやすいらしい。それもそうだろう。気を使わずに話せるのは、この中で平凡な私くらいだ。
「お二人は先に会場に入っててください。世奈ちゃんはこちらへ」
「なぜ白井さんだけ別なのでしょうか?」
丸留さんが、私に代わって質問してくれた。
「世奈ちゃんにとても似合うドレスを見つけたのでぜひ着ていただきたくて。それにお化粧をしないのは、どうかと……」
女性は女性らしくドレスを着て、女性らしい化粧をしろということなのだろう。
「せっかく用意したので見るだけでも。お二人も気になるのであればどうぞご一緒に」
「それは楽しみですわ。行きましょう。世奈様」
ルココちゃんは、私の腕を掴み、新道先生についていく。私に正装を準備したルココちゃんが一番ノリノリなのは何故だろうかと戸惑いつつも身を任せることにした。
控室に入るとそこには大人の女性が着るようなタイトドレスがハンガーラックにかけられていて、ドレスに合うピンヒールも用意されていた。
「こちらを着てください。メイクは着替えが終わったらメイクの人を呼びますから」
新道先生は、弾むような声で説明した。
「世奈様、お好きなようにしてください」
ルココちゃんは、私にだけ聞こえる声でそう言って微笑むと、男性陣を連れて部屋を出ていった。
ドレスは、とても綺麗で華美でなく、短い髪の私でも気兼ねなく着ることのできるデザインだ。
こういうドレスを着ることに少し憧れがある。
このドレスを着て、パーティーに参加するような大人にいつかなれるのだろうか、なんて学生の頃は思っていた。
両親の借金が発覚して以降、そんな夢は愚か、普通の人生さえも諦めていた。同級生よりも何歩も、何十歩も遅れて社会に出て、がむしゃらに働いてもみんなに追いつけないと思っていた。
でもルココちゃんに出会って、頼人さんに教えてもらって、もしかしたら追いつけるかもしれないと思うようになってきた。
このドレスを着れば、私は夢のような人生を体験することができるだろう。
ドレスに触れると、肌を優しく撫でるように生地が動いた。
同級生に追い付いてもこんな大きなパーティーに呼ばれるようになるまでには、どのくらいの努力を続ける必要があるのだろうか。このドレスたちを手に入れるために、どれだけの時間を費やす必要があるのだろうか。
棚からぼたもちのチャンスを手にしないなんて馬鹿げている。きっと、これまで死ぬほどの努力をしていなければそう思っていただろう。
ルココちゃんは、好きなようにと言った。
ということは、着替えても着替えなくてもいいということだ。私がここにいるのは、ルココちゃんのおかげだ。そして今私は、ルココちゃんの好きな人を演じている。私が着るべき服は、決まっている。
パーティー当日、私はルココちゃんが用意してくれたパンツスーツを着て、丸留さんが運転する車に乗ってルココちゃんと一緒に会場に向かった。頼人さんは、仕事を片付けてくるそうで、現地での集合となった。
私たちは、ひと足先に会場に着き、外で頼人さんを待つことにした。正装した男女が、次々と会場の中に入っていく中、会場から一人の男性が、出てきた。
「ああ、居たいた。世奈ちゃん」
どうも、先生にとって私が一番話しやすいらしい。それもそうだろう。気を使わずに話せるのは、この中で平凡な私くらいだ。
「お二人は先に会場に入っててください。世奈ちゃんはこちらへ」
「なぜ白井さんだけ別なのでしょうか?」
丸留さんが、私に代わって質問してくれた。
「世奈ちゃんにとても似合うドレスを見つけたのでぜひ着ていただきたくて。それにお化粧をしないのは、どうかと……」
女性は女性らしくドレスを着て、女性らしい化粧をしろということなのだろう。
「せっかく用意したので見るだけでも。お二人も気になるのであればどうぞご一緒に」
「それは楽しみですわ。行きましょう。世奈様」
ルココちゃんは、私の腕を掴み、新道先生についていく。私に正装を準備したルココちゃんが一番ノリノリなのは何故だろうかと戸惑いつつも身を任せることにした。
控室に入るとそこには大人の女性が着るようなタイトドレスがハンガーラックにかけられていて、ドレスに合うピンヒールも用意されていた。
「こちらを着てください。メイクは着替えが終わったらメイクの人を呼びますから」
新道先生は、弾むような声で説明した。
「世奈様、お好きなようにしてください」
ルココちゃんは、私にだけ聞こえる声でそう言って微笑むと、男性陣を連れて部屋を出ていった。
ドレスは、とても綺麗で華美でなく、短い髪の私でも気兼ねなく着ることのできるデザインだ。
こういうドレスを着ることに少し憧れがある。
このドレスを着て、パーティーに参加するような大人にいつかなれるのだろうか、なんて学生の頃は思っていた。
両親の借金が発覚して以降、そんな夢は愚か、普通の人生さえも諦めていた。同級生よりも何歩も、何十歩も遅れて社会に出て、がむしゃらに働いてもみんなに追いつけないと思っていた。
でもルココちゃんに出会って、頼人さんに教えてもらって、もしかしたら追いつけるかもしれないと思うようになってきた。
このドレスを着れば、私は夢のような人生を体験することができるだろう。
ドレスに触れると、肌を優しく撫でるように生地が動いた。
同級生に追い付いてもこんな大きなパーティーに呼ばれるようになるまでには、どのくらいの努力を続ける必要があるのだろうか。このドレスたちを手に入れるために、どれだけの時間を費やす必要があるのだろうか。
棚からぼたもちのチャンスを手にしないなんて馬鹿げている。きっと、これまで死ぬほどの努力をしていなければそう思っていただろう。
ルココちゃんは、好きなようにと言った。
ということは、着替えても着替えなくてもいいということだ。私がここにいるのは、ルココちゃんのおかげだ。そして今私は、ルココちゃんの好きな人を演じている。私が着るべき服は、決まっている。