男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
控室を出ると、新道先生は困惑した表情を浮かべ、ルココちゃんは、にっこりと微笑んでいた。
「これが私なので。このままではパーティーに参加できなければ、私はご遠慮します」
ルココちゃんは珍しく、隣にいた丸留さんの腕を両手で掴んでぎゅっとし、目を輝かせている。
「どうしましょう。丸留。ルココは幸せ者かもしれません」
丸留さんは、まるで娘を見るかのような微笑みを浮かべ、ルココちゃんを上から見ている。
「ドレス気に入らなかったですか?」
「いいえ。とても素敵なドレスでした」
「じゃあ、なぜ?」
「この格好でダメな理由が浮かばなかったからです」
お呼ばれしたパーティーで着てはいけない服装をルココちゃんが用意するわけがない。本当のことを言わなくたって、それなりに通る話をすればいいだけだ。
私は、一日でも長くルココちゃんが自由でいられる時間を作るために、ここにいる。変なことを言って、疑われてこれまでの時間を台無しになんてできない。私や私の家族が十分な食事と睡眠ができるのは、ルココちゃんのおかげだ。弟や妹が学費の心配せずに日々を過ごせるのは、ルココちゃんが私を見つけてくれたおかげだ。
私が口にしたのは嘘ではない。真実だけを伝えれば、ボロなんて出ない。私は、笑顔で堂々と立って新道先生を見つめた。
「そうですか。わかりました」
新道先生は、残念そうに視線を下ろし、会場へと戻っていった。
私たちも、距離を保ちつつ、頼人さんと待ち合わせしている場所に向かった。
見えなくても近づくだけで分かる隠し切れない存在感。
過ぎゆく女性たちが、高いトーンで話すイケメンの目撃証言。存在するだけで女性たちに花を咲かせる男なんて、そうそういない。
頼人さんは、壁沿いに立ち、スマホをいじっていたが、ルココちゃんに気づくとスマホをポケットに入れてこちらに向かって歩いてきた。
「なんだ、もう居たのか」
「お兄様も着いていらしたのならご連絡くださればよろしかったのに」
「別に俺は急いでないからな」
乗り気じゃない頼人さんが付き添いで来るのは、何を隠そうルココちゃんのためだ。大事な妹のためならなんでもする頼人さんは、元々予定があったにも関わらず、無理やり予定を空けて来てくれたのだ。
ルココちゃんを傷つけるような人はいないと思いたいが、今日も変わらず舞踏会のようなドレスを着たルココちゃんは、頼人さんと丸留さんのおかげで不思議と調和しているが、流石に人様のパーティーで注目がルココちゃんに集中するのは、頼人さんも望まなかったのだろう。
おかげで、私の周りは異様な光景が広がっている。いや、私が不純物だ。私がいなければ、ある意味完成した世界になっているのだろう。
「何あそこ? ドラマの撮影でもあるのかな?」
「あんなイケメンいたっけ? アイドル? 俳優?」
「あの子も可愛い。ドレスも素敵」
「ヤバイ。私もあんなイケメン三人に囲まれたい」
否、私もその一部になれているようだ。ただし、男として。
嬉しいような、悲しいような。
「ルココ、なんか今日機嫌がいいな」
「ええ、とても。そうだ、お兄様。本日は世奈様をエスコートしてくださらない?」
「ルココはどうする?」
「丸留がいるではないですか」
頼人さんが、丸留さんを見つめると、丸留さんは微笑みながら首を垂れた。
「本日は、私もお呼ばれしている身でございますので、ルココお嬢様は私にお任せください」
「わかった」
ルココちゃんは、丸留さんが差し出した腕に手を添え、歩き出す。私もエスコートされる側として頼人さんの腕に手を添えるべきかと思ったが、頼人さんは腕を差し出すことなくスタスタと歩き出した。
「これが私なので。このままではパーティーに参加できなければ、私はご遠慮します」
ルココちゃんは珍しく、隣にいた丸留さんの腕を両手で掴んでぎゅっとし、目を輝かせている。
「どうしましょう。丸留。ルココは幸せ者かもしれません」
丸留さんは、まるで娘を見るかのような微笑みを浮かべ、ルココちゃんを上から見ている。
「ドレス気に入らなかったですか?」
「いいえ。とても素敵なドレスでした」
「じゃあ、なぜ?」
「この格好でダメな理由が浮かばなかったからです」
お呼ばれしたパーティーで着てはいけない服装をルココちゃんが用意するわけがない。本当のことを言わなくたって、それなりに通る話をすればいいだけだ。
私は、一日でも長くルココちゃんが自由でいられる時間を作るために、ここにいる。変なことを言って、疑われてこれまでの時間を台無しになんてできない。私や私の家族が十分な食事と睡眠ができるのは、ルココちゃんのおかげだ。弟や妹が学費の心配せずに日々を過ごせるのは、ルココちゃんが私を見つけてくれたおかげだ。
私が口にしたのは嘘ではない。真実だけを伝えれば、ボロなんて出ない。私は、笑顔で堂々と立って新道先生を見つめた。
「そうですか。わかりました」
新道先生は、残念そうに視線を下ろし、会場へと戻っていった。
私たちも、距離を保ちつつ、頼人さんと待ち合わせしている場所に向かった。
見えなくても近づくだけで分かる隠し切れない存在感。
過ぎゆく女性たちが、高いトーンで話すイケメンの目撃証言。存在するだけで女性たちに花を咲かせる男なんて、そうそういない。
頼人さんは、壁沿いに立ち、スマホをいじっていたが、ルココちゃんに気づくとスマホをポケットに入れてこちらに向かって歩いてきた。
「なんだ、もう居たのか」
「お兄様も着いていらしたのならご連絡くださればよろしかったのに」
「別に俺は急いでないからな」
乗り気じゃない頼人さんが付き添いで来るのは、何を隠そうルココちゃんのためだ。大事な妹のためならなんでもする頼人さんは、元々予定があったにも関わらず、無理やり予定を空けて来てくれたのだ。
ルココちゃんを傷つけるような人はいないと思いたいが、今日も変わらず舞踏会のようなドレスを着たルココちゃんは、頼人さんと丸留さんのおかげで不思議と調和しているが、流石に人様のパーティーで注目がルココちゃんに集中するのは、頼人さんも望まなかったのだろう。
おかげで、私の周りは異様な光景が広がっている。いや、私が不純物だ。私がいなければ、ある意味完成した世界になっているのだろう。
「何あそこ? ドラマの撮影でもあるのかな?」
「あんなイケメンいたっけ? アイドル? 俳優?」
「あの子も可愛い。ドレスも素敵」
「ヤバイ。私もあんなイケメン三人に囲まれたい」
否、私もその一部になれているようだ。ただし、男として。
嬉しいような、悲しいような。
「ルココ、なんか今日機嫌がいいな」
「ええ、とても。そうだ、お兄様。本日は世奈様をエスコートしてくださらない?」
「ルココはどうする?」
「丸留がいるではないですか」
頼人さんが、丸留さんを見つめると、丸留さんは微笑みながら首を垂れた。
「本日は、私もお呼ばれしている身でございますので、ルココお嬢様は私にお任せください」
「わかった」
ルココちゃんは、丸留さんが差し出した腕に手を添え、歩き出す。私もエスコートされる側として頼人さんの腕に手を添えるべきかと思ったが、頼人さんは腕を差し出すことなくスタスタと歩き出した。