男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
会場に入ると老若男女が立食しながら話していた。
「シャンパンはいかがですか?」
ウェーターがシャンパンを手渡してくれたので、そのまま受け取り、ルココちゃんについていく。
ルココちゃんは、並べられた料理を見にいくようだ。
「これはこれは、芹沢様。このようなところにいらっしゃるのは珍しいですね」
白髭の紳士に頼人さんが話しかけられるも、ルココちゃんはお構いなしに目的の方に向かっていく。
頼人さんは足を止め、挨拶を始めた。
「ご無沙汰しております。本日はご縁がありまして、少し顔を出したまでです」
「まあ、頼人くん。こんなところで会えるなんて」
「芹沢のところの坊ちゃんじゃないか」
周りに増えていく人だかり。
Serizawa groupの長男は、人気らしい。私は邪魔にならないように静かに一歩、また一歩と下がっていく。
いつもの頼人さんとは雰囲気が違い、愛想よく挨拶をしている。なんだか透明な壁ができたかのように近づける気がするのに近づけない何かを感じる。
「彼は人気者だね」
いつの間にか後ろに立っていた新道先生が、私の耳元で囁いた。
「うわっ!」
「そんなにびっくりしないでよ」
新道先生は、私の肩に手を回し、にこりと笑う。
この人は、本当に距離感というものが狂っているようだ。
「世奈ちゃんに紹介したい人がいるんだ」
「紹介したい人、ですか?」
「うん。僕の父」
新道先生に押されて振り返ると、白髪交じりのおじさんがこちらに歩いてきた。
「お父さん、こちらが白井世奈ちゃん、僕のーー」
「そんなことより、頼人君はどこだ」
新道先生の表情が明らかに固まった。それもそのはず。自分の息子の顔も見ず、キョロキョロと周りを険しい顔で見ている。
「あそこだよ。あの人だかり。見れば分かるでしょう」
「分かるでしょうじゃないだろう。頼人君をもてなしなさい!」
苛立ちを隠す気もない新道先生の父親は、人だかりをかき分けて頼人さんに近づいていった。
「本当にいらしたんですね。ご迷惑とは思いつつ、毎年お父様へ招待状をお送りしておりましたが、頼人君が来てくれるとは」
「ご無沙汰しております」
「以前お会いした時は、まだこんなに小さくて。あ、いや、小学生にしては背も高く、しっかりされておりましたがーー」
会場中に響き渡るような新道先生の父親の大きな声は、新道先生の血の気を吸い取っていくようだ。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ちょっと気分が。ちょっと横になりたいから、控室まで僕を支えていってくれないかな?」
「はい。もちろんです」
新道先生を支えながら歩いて、控室まで移動する。控室は人がおらず、二人掛けのソファーに先生を連れて行きゆっくりと腰を下ろしたその時だった。
「おっと、ごめんね」
つまづいた新道先生が、私をソファーに押し付けるような姿勢になった。
「シャンパンはいかがですか?」
ウェーターがシャンパンを手渡してくれたので、そのまま受け取り、ルココちゃんについていく。
ルココちゃんは、並べられた料理を見にいくようだ。
「これはこれは、芹沢様。このようなところにいらっしゃるのは珍しいですね」
白髭の紳士に頼人さんが話しかけられるも、ルココちゃんはお構いなしに目的の方に向かっていく。
頼人さんは足を止め、挨拶を始めた。
「ご無沙汰しております。本日はご縁がありまして、少し顔を出したまでです」
「まあ、頼人くん。こんなところで会えるなんて」
「芹沢のところの坊ちゃんじゃないか」
周りに増えていく人だかり。
Serizawa groupの長男は、人気らしい。私は邪魔にならないように静かに一歩、また一歩と下がっていく。
いつもの頼人さんとは雰囲気が違い、愛想よく挨拶をしている。なんだか透明な壁ができたかのように近づける気がするのに近づけない何かを感じる。
「彼は人気者だね」
いつの間にか後ろに立っていた新道先生が、私の耳元で囁いた。
「うわっ!」
「そんなにびっくりしないでよ」
新道先生は、私の肩に手を回し、にこりと笑う。
この人は、本当に距離感というものが狂っているようだ。
「世奈ちゃんに紹介したい人がいるんだ」
「紹介したい人、ですか?」
「うん。僕の父」
新道先生に押されて振り返ると、白髪交じりのおじさんがこちらに歩いてきた。
「お父さん、こちらが白井世奈ちゃん、僕のーー」
「そんなことより、頼人君はどこだ」
新道先生の表情が明らかに固まった。それもそのはず。自分の息子の顔も見ず、キョロキョロと周りを険しい顔で見ている。
「あそこだよ。あの人だかり。見れば分かるでしょう」
「分かるでしょうじゃないだろう。頼人君をもてなしなさい!」
苛立ちを隠す気もない新道先生の父親は、人だかりをかき分けて頼人さんに近づいていった。
「本当にいらしたんですね。ご迷惑とは思いつつ、毎年お父様へ招待状をお送りしておりましたが、頼人君が来てくれるとは」
「ご無沙汰しております」
「以前お会いした時は、まだこんなに小さくて。あ、いや、小学生にしては背も高く、しっかりされておりましたがーー」
会場中に響き渡るような新道先生の父親の大きな声は、新道先生の血の気を吸い取っていくようだ。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ちょっと気分が。ちょっと横になりたいから、控室まで僕を支えていってくれないかな?」
「はい。もちろんです」
新道先生を支えながら歩いて、控室まで移動する。控室は人がおらず、二人掛けのソファーに先生を連れて行きゆっくりと腰を下ろしたその時だった。
「おっと、ごめんね」
つまづいた新道先生が、私をソファーに押し付けるような姿勢になった。