男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
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 僕が何をしたというんだ。僕は、かわいそうな世奈ちゃんとちょっとばかし楽しんでいただけじゃないか。
 ドレスも自由に着させてもらえない、ルココちゃんに洗脳された関係、頼人には放置されて、奴隷のように扱われるかわいそうな世奈ちゃんに、僕が手を差し伸べ、本当の快楽を教えてあげようとしただけじゃないか。

「お前はなんてことをしてくれたんだ」

 怒号とともに今まで一度も飛んできたことが無い父の拳が飛んできた。今日はこれで二度目だ。

「あなた。もうやめてちょうだい」
「大事な会社のパーティーで、しかも、あの芹沢家のご友人に」

 僕が、父のパーティー中に控室を楽園にするのは毎年のことだ。起こっているのは、その相手が芹沢家が関与しているというところだけ。しかも、なんか僕が無理やり押し倒したみたいな話で進んでいる。
 あれは世奈ちゃんも望んだことじゃん。逃げなかったのはそういうことでしょう。感じて、喘いでたし、抵抗しなかったもん。ってか、僕相手に逃げたり、拒否するような女性は、『この世界にいない』から。
 本当に大袈裟だ。
 それもこれも、頼人が悪い。
 いきなり乗り込んできて、僕に罵声を浴びせて殴ってきやがった。父は、息子が酷い目にあっているというのに呆然とドアの向こうでルココちゃんと一緒に立っていた。
 誰がどうみても、頼人が加害者なのに、今は僕が犯罪者みたいな仕打ちを受けている。

「それにしても、男にまで手を出すとは」
「世奈ちゃんは女だよ」
「……女性、なのか?」
「うん」

 父が青ざめていく。

「お前、もしかして、頼人君の彼女と……」

 そうか。そうだよね。この場合、世奈ちゃんは、頼人の彼女ってことになるよね。
 僕は、笑いそうになる表情を必死に抑えた。

「頼人君も遊んでいるみたいだよ」
「お前は黙ってろ!」

 ふふっ。あとは、扉の外で聞き耳立ててる野次馬に任せるとするか。
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