男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
「俺たちはそんな関係じゃない」
「んふふ。そうですわ。お兄様はこう見えて奥手ですのよ。デートはしても、まだ手を繋ぐ以上のことはできませんのよ」

 ルココちゃん、なんかこの状況楽しんでいないか?
 しかも、ちょっと頼人さんのこと馬鹿にしてるよね。まあ、実際私たちは恋人でもなんでもないからそれ以上のことをするはずもないんだけど。

「そうか? だが、最近は毎日白井さんの家に泊まり込んでいるそうじゃないか」
「え? お兄、様?」

 流石のルココちゃんも驚いている。ヤバい。たった一日だけだと思っていたから何も言わなかったけれど、頼人さんが心配して、二日、三日と連続で来てくれて、それがこんなに続くと思っていなかったから、結局言いそびれていた。

「違うんだ、ルココ。あんなことがあった後だし、何があるか分からないから、護衛というか、なんというか。本当に何もないんだ」
「ルココちゃん。頼人さんの言う通りで、夜中うなされたり、あのことを思い出したりして一人が怖くて、それで頼人さんが家にいてくれるだけで、本当にそれ以上でもそれ以下でもなくて」

 二人して必死にルココちゃんに言い訳する光景がおかしかったのか、芹沢父は笑いならが会話に入ってきた。

「なぜ私ではなく、ルココに説明しているのかな? まあ、いい。白井さん、あなたが被害を受けたことは私も聞いています。が、正直全てを信じることは難しい。あなたのご家族、借金をしていますよね」

 家族を調べられるのなんて、当然と言えば当然か。ここは下手に嘘をつかない方がいいだろう。

「はい」
「今は、のどから手が出るほどお金が欲しいはずです」

 まさにその通りで、ぐうの音もでない。

「新道さんも息子の不祥事を世間には公表したくないようです。テレビや雑誌にも引っ張りだこですからね。被害届なんて出されたら、たまったものじゃないのでしょう。示談であれば数百万は軽く出すでしょう」

 芹沢父は上半身を前に倒し、膝の上で手を組んだ。

「でも、あなたは数百万程度じゃ足りない。この騒動はあなたが仕組んで、私の娘や息子に罪悪感を植え付け、金のなる木として、一生金を吸い取ろうとしているんじゃありませんか?」
「世奈様はそんな」
「ルココは黙っていなさい」

 芹沢父は、ルココちゃんの目を見ることもなく、ただ、その圧でルココちゃんを黙らせた。
 お金はいらない、なんて嘘になる。だって今もルココちゃんとの約束を守って成功報酬をもらうために頼人さんの彼女役をしにきたんだ。だから、私は私が言えることだけを伝えるんだ。
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